第8回横浜トリエンナーレ 第1弾参加アーティスト発表

日本で初めて紹介されるアーティストが多数出展

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」[会期:2024年3月15日(金)〜6月9日(日)]は、先行きの見えないこの時代を、野草のようにもろく無防備でありながら、同時にたくましく生きようとするひとりひとりの姿に目を向けます。世界中から集まる現代アーティストたちの作品を通してわたしたちの生き方をふり返り、その先にきっとある希望をみなさんとともに見出したいと考えます。

主な参加アーティストの中には、日本初出展のアーティストが多数います。北極圏に生活する遊牧民「サーミ族」の血をひき、資源不足や気候変動に直面する今の社会に対し、人と自然の新たな共生のあり方を示すヨアル・ナンゴ(Joar NANGO)、トランスジェンダーであり自らの性移行をアート・プロジェクトとして公開するなど、既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問うピッパ・ガーナー(Pippa GARNER)。また、南アフリカの社会に潜む家父長制や植民地主義から生まれる不平等について日用品を使った立体作品で表現するルンギスワ・グンタ(Lungiswa GQUNTA)、集団による協働作業のプロジェクトを実践するためにウクライナのリヴィウで結成され、今回は戦時下の市民生活をリアルに伝える作品を発表するオープングループ(Open Group)などです。日本からは、都市の死角や隙間である路上や地下を舞台に、グラフィティやパフォーマンスなどストリートカルチャーの視点からプロジェクトを展開して注目を集める若手アーティストのSIDE COREが参加し、新作を発表します。

本展には、67組の多様な国籍のアーティストが参加し(2023年11月28日現在)、うち日本で初めて紹介されるのは30組です。詳細は「参加アーティスト一覧」をご参照ください。

これらアーティストの作品は、横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKOの会場内で展示されるとともに、一部は、3会場の建物の外側、街の中、横浜美術館の無料エリアでも楽しむことができます。

主な参加アーティスト

※作品はいずれも参考画像です

ヨアル・ナンゴ Joar NANGO

《GIRJEGUMPI: The Sámi Architecture Library in Jokkmokk》2018
Photo: Astrid Fadnes

ヨアル・ナンゴ
Joar NANGO

1979年、アルタ(ノルウェー)生まれ、ロムサ/トロムソを拠点に活動。北欧とロシア北部を移動するトナカイ遊牧民「サーミ族」の血筋をひく。地域内の資源循環に関心をもち、現地の素材をとりいれた仮設の構築物をつくる。それは資源不足や気候変動に直面する今の社会に対し、先住民の知恵にならった 人と自然の共生のあり方を示す実践である。本展では横浜美術館のファサードに展示予定の「サーミ族」のことばを用いた作品にも要注目。

ピッパ・ガーナー Pippa GARNER

《Human Prototype》2020
Courtesy of the artist and STARS, Los Angeles,
Photo: Bennet Perez

ピッパ・ガーナー
Pippa GARNER

イリノイ州エヴァンストン(米国)生まれ、カリフォルニアを拠点に活動。ジェンダーを超えた作品で知られ、広告がつくり出す男女のイメージや消費社会に「生きづらさ」を感じてきた自らの経験をもとに作品を発表。1980年代にはアート・プロジェクトとして自ら異なる性に移行。性別、肌の色、年齢や既成概念にとらわれない多様性のあり方を社会に問う。

ルンギスワ・グンタ Lungiswa GQUNTA

《Ntabamanzi》2022
Courtesy of the artist and Henry Moore Foundation,
Photo: Rob Harris
Photo : Min Young Lim

ルンギスワ・グンタ
Lungiswa GQUNTA

1990年、ポートエリザベス(南アフリカ)生まれ、ケープタウンを拠点に活動。南アフリカにおける家父長制や植民地主義から生まれた不平等がひそむ「風景」を立ち上がらせる作品で知られる。有刺鉄線を編んだインスタレーションに布や身近な音などの柔らかい素材を組み合わせ、冷たさと暖かさの対比、異なる意味の重なりを生みだす。本展では横浜美術館内の無料エリアで有刺鉄線を使ったダイナミックな新作を展示予定。

オープングループ Open Group (Yuriy BILEY, Pavlo KOVACH, Anton VARGA)

《Repeat After Me》2022 (video still),
Courtesy of the artists

オープングループ
Open Group (Yuriy BILEY, Pavlo KOVACH, Anton VARGA)

2012年、ウクライナのリヴィウで結成されたコレクティヴ。中心メンバーはユリー・ビーリー、パヴロ・コヴァチ、アントン・ヴァルガ。対話や討論、コミュニティへの参加や協働などの実践を通して作品を制作する。ロシアのウクライナ侵攻によってリヴィウの難民キャンプに逃れた市民を取材し、戦争や紛争の現状をリアルに伝える作品を日本で初公開する。

SIDE CORE

SIDE CORE/EVERYDAY HOLIDAY SQUAD《rode work ver. under city》2023,
Courtesy of CCBT
Photo: Shin Hamada

SIDE CORE

2012年より活動を開始、東京都を拠点に活動。メンバーは高須咲恵、松下徹、西広太志。個人がいかに都市や公共空間のなかでメッセージを発するかという問いのもと、ストリートカルチャーの思想や歴史などを参照し制作する。ときに他ジャンルの表現者を交えたプロジェクトとして、都市の死角や隙間となる場所で多彩な作品を展開。本展では横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO の3会場で新作を発表する。

参加アーティスト一覧(2023年11月28日現在)

参加アーティスト 67組:うち日本初出展30組、新作出展21組(2023年11月28日現在)

※姓のアルファベット順に記載

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

新型コロナウイルス感染症のパンデミックや、気候変動と環境破壊、各地で繰り返される紛争や戦争など、わたしたちは今、地球全体で取り組むべき大きな危機に直面しています。こうしたさまざまな課題は、国という枠組みや資本主義といった社会システムの限界も明らかにしています。

先行きの見えづらいこの時代に開かれる第8回横浜トリエンナーレでは、文学や美術による社会の変革を目指した中国の小説家、魯迅(ろじん、1881~1936年)を出発点とします。今から100年前に魯迅が中国の激動期に書いた散文詩集『野草』には、時代の波に翻弄されながらも、ひとりひとりの生命を慈しみ、たくましく生きようとする精神があらわれています。魯迅のそうした哲学は、今もなお文化をとおして時や国境をこえ生き続けています。

この展覧会では魯迅が生きた時代から今日までの約100年間を射程とし、その間におきた歴史の転換点や重大な事件を、世界各地のアーティストの作品をとおしてふり返ります。そこには多様な個性をもつわたしたちが、いかに手を取り合い、自然と共生し、これから生きるべきかという問いへのヒントも込められていることでしょう。個々人の命ははかなくとも、それらがつながることで困難を乗り越える力になると信じて、本展はひとりひとりが未来を生き抜くための希望を見いだす場を目指します。

開催概要

展覧会名

第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」

アーティスティック・ディレクター

リウ・ディン(劉鼎)、キャロル・インホワ・ルー(盧迎華)

会期

2024年3月15日(金)~6月9日(日)
[開場時間:10:00~18:00|休場日:毎週木曜日 (4/4、5/2、6/6を除く) |開場日数:78日間 ]

会場

横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO

主催

横浜市
(公財)横浜市芸術文化振興財団
NHK
朝日新聞社
横浜トリエンナーレ組織委員会