開催概要
2001年に始まった現代美術の国際展「横浜トリエンナーレ」の第3回展。総合ディレクターの掲げるテーマに基づき、世界25カ国・地域より72名の作家を選定し、多様な作品 (映像、インスタレーション、写真、絵画、彫刻等) を展示します。世界最先端の現代美術の紹介に努め、新作を中心に展観する一方、開催地・開催場所の魅力や個性を生かした作品 (サイトスペシフィック・ワーク) も数多く含めることによって、街を取り込んだ大規模な「現代アートの祭典」といたします。
会期中は、トリエンナーレのコンセプトや理念を補完するシンポジウムをはじめ、作家と参加者との対話が広がるようなワークショップやギャラリー・トークなどの交流イベントも積極的に展開。また、国内外の美術機関や他の国際展との連携も模索していきます。
名称 |
横浜トリエンナーレ2008 YOKOHAMA 2008: International Triennale of Contemporary Art |
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会期 |
2008年9月13日 土曜日 から 11月30日 日曜日 (計79日間・会期中無休) 午前10時-午後6時(入場は午後5時まで、三溪園のみ午後4時半まで) ※各会場の詳しい開場・閉場時間は、会場・アクセスページをご覧下さい |
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会場 |
新港ピア、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、赤レンガ倉庫1号館ほか | |||
主催 |
国際交流基金 横浜市 NHK 朝日新聞社 横浜トリエンナーレ組織委員会 | |||
後援 |
外務省 文化庁 神奈川県 神奈川新聞社 | |||
助成 |
オーストリア大使館 (オーストリア文化フォーラム) BMUKK (Bundesministerium für Unterricht, Kunst und Kultur) CULTURESFRANCE The Danish Arts Council ifa (Institut für Auslandsbeziehungen e.V.) Pro Helvetia 財団法人野村国際文化財団 グレイトブリテン・ササカワ財団 ブリティッシュカウンシル | |||
総合ディレクター |
水沢 勉 | |||
キュレーター |
ダニエル・バーンバウム |
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フー・ファン |
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三宅暁子 |
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ハンス・ウルリッヒ・オブリスト |
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ベアトリクス・ルフ |
(アルファベット順)
全体テーマ
TIME CREVASSE (タイムクレヴァス)
アートがわたしたちにあたえてくれる無限のエネルギーを、横浜で開かれる大規模な国際展でもう一度確認したいと思います。
アートは、わたしたちの日常をゆさぶり、普段は気づかない、あるいは、しばしば忘れているふりをしてしまっている「深淵」を垣間見させ、わたしたちをときに慄然とさせ、ときに勇気づけ、ときに慰め、ときに生きる覚悟をあたえてくれます。
アートの豊かさは、「新しさ」によって保証されているのではないこと。紀元前に遡るギリシャ古典古代のテキストがつい今しがた隣人によって書かれたような身近さを感じさせ、遠い異国の何世紀を経た楽曲の響きが生まれたばかりの新鮮さで耳に届き、自分が属する文化圏とはほとんど無縁の宗教空間の美的な達成に圧倒されるときに、わたしたちは繰り返しそのことを実感しています。
「新 / 旧」というパラダイムは、単線的な時間という、硬直した世界観によって保証されているのではないでしょうか。いま世界は、高度な情報化によって、時間も空間もひとつの基準によって標準化されているように思われますが、じつはその標準化そのもののためにかえって多くの分断、おそらく、人類の歴史のなかでも、そうとうに深刻な分断をわたしたちは生きることを余儀なくされているように感じられるのです。
時間は複数の系として流れている。とはいえ、そのこと自体がそのまま豊かであるわけでありません。むしろ、時間は、ときに捩れ、渦巻き、ぶつかりあい、そこに予想をしない亀裂が生じ、そこに深淵が顔を覗かせます。
アートの力は、まずは、その深淵を直視し、いうならば「タイムクレヴァス」のかたわらに佇むことによって、個人と社会、国家、性差、世代差、人種、宗教といった相互の差異を、現在の自分自身が置かれている状況を含めて、徹底して感じ取ることから生まれ出てくるのではないでしょうか。
雪原に口を開くクレヴァスは、きわめて「美しい」ものだといいます。しかし、アートの力は、そこに転落する誘惑を断ち切る力も同時に秘めています。そこにひとびとが交通するための橋を架ける行為でもあるのです。
横浜というわずか150年ほど前に、世界へと初めて開かれた、若い都市は、そのようなアートによる橋をかけるための相応しい場所ではないでしょうか。そして、それが文化的な成熟へのたいせつな一歩となってくれることを願い、横浜トリエンナーレ第三回展をわたしは「タイムクレヴァス」と命名したのです。
総合ディレクター 水沢 勉
2006年11月