第7回
テーマ:理解講座アーティスト版「1秒の光で世界をつくる」
日程:10月29日(日)
講師:SHIMURAbros
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本講座では、横浜出身の姉弟によるアーティストユニットで、現在はスタジオ・オラファー・エリアソンの研究員としてベルリン在住のSHIMURAbrosさんを招き、ワークショップを行いました。
SHIMURAbros(左:ケンタロウさん、右:ユカさん)
「光」をテーマにした本ワークショップでは、まずお二人の活動やオラファー・スタジオの様子をうかがった後に、参加者がヨコハマトリエンナーレ2017の展示会場内で1秒の動画を撮影しました。
その後、ランプの組み立てワークショップを行う間に動画の編集を行い、最後に、参加者が撮影した映像の上映会が行われました。多様な文化背景の方のご参加を募り、今回は、ヴェトナムからの難民定住者であるチャンさんのご一家、三世代、総勢7名にもご参加いただきました。
ジョコ・アヴィアントの作品の前でお話をされるチャンさんご一家
ワークショップの中では、SHIMURAbrosさんが随所で、オラファー自身の言葉や彼の制作に通底する考えを共有して下さいました。
たとえば、オラファーのスタジオでは数多くのセクションがあるのですが、それぞれが「有機的(Organic)」に繋がっていることが非常に重要だと言います。そこでは、異なるものが分断するのではなく、ひとつにまとまっていくことが構想され、それゆえに、オーガニックランチが提供されるお昼の時間も大切で、90人ほどいるスタッフが長机を囲み、情報交換をしながら「同じ釜の飯を食べる」ことで繋がりを強化することに一役買っているそうです。
また、SHIMURAbrosさんはこのスタジオの中で、X線や赤外線、また時にはCTスキャナーなども用いて、普段は私たちの肉眼では見えない世界を見る映像作品を制作されているそうです。
お二人が制作された映像作品もいくつか紹介されましたが、たとえば、書籍をCTスキャナーで読み込んだ映像には、普段われわれがページを繰りながらそこに印刷された情報を読むとは全く異なる、物体としての書物の姿が立ち上がり、想像を超えた映像が現れました。こうした作品からは、オラファーも普段強調されているという、物事を多角的に見ることの大切さが感じられました。
最後の上映会では、それぞれの参加者による撮影の意図についてもうかがいました。同じ会場を舞台としながらも、撮影のポイントや、切り口がどれひとつと同じではなく、それぞれ異なっていたことも興味深く感じられましたが、とりわけ印象的だったのが、チャンさんのお父様の視点です。
今回のトリエンナーレの目玉作品のひとつとして、入口に展示されているジョコ・アヴィアントの巨大なインスタレーションをご覧になられてすぐに、難民船に乗って日本に辿り着いた時に見た大波を思い出されたと言います。難民船に乗って三日が過ぎた時に台風に遭った体験などもお話し下さり、そうした生の声をうかがうことが出来たことは、有意義でした。
最終回となった今回の講座では、「光」というオラファーの作品制作の中でも重要なモチーフに着目しました。
「光を見た瞬間に心が響く」とチャンさんのお嬢さんは表現されていましたが、SHIMURAbrosさんのワークショップは、光を映画というメディアで捉えることによって、偶然性が生み出す新しいものの見方の面白さを実感できるような内容となりました。
さらにチャンさん一家をはじめ、多様な文化背景の方々と映像を通して、それぞれの価値観や体験を共有し合うことにより、より一層Green lightプロジェクトの意義への理解が深まった回となりました。
*撮影:田中雄一郎
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